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Gran-desastre

添付資料④

マリアがアラトリステに結婚を持ちかける場面

この場面の劇場版の字幕は手元にないため、正確に再現することが出来ません。
記憶を基に書き起こしたものですが、参考資料として記しました。
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マリアの屋敷で一夜を過ごしたアラトリステが帰り支度をしています。
ネグリジェ姿のマリアは、アラトリステのスカーフを繕いながら、「私の夫、死にかけてるの」と話しだします。
アラトリステは驚いて、「気の毒に」と答えますが、マリアは「ひどい話」と言いながら、平然としています。マリアの夫は一座の座長で、便宜上、結婚しているだけなのです。

マリアは「夫が死んだら再婚するわ。一人はいやなの。どう? あなたは私の最初の男だし」と持ちかけます。アラトリステは、「俺は一文なしだ」と取り合いませんが、マリアは「お金は私が稼ぐわ」と積極的です。

ここまでの訳文は正しいのですが、以後は完全な意訳です。アラトリステは、「で…どうするんだ、ファンたちは」と問題点を指摘します。しかし、ここは女優が「ファン」と遊びで浮気をするという簡単な話ではありません。どうしても必要な”パトロン(愛人)”のことだと観客が理解しなくては困ります。劇場版の訳者が原作本を読んでいれば、分かったはずなのですが。

マリアは、「私は女優で、歳を取り始めてる。誰かに守って欲しいのよ」と訴えます。これでは”結婚して守ってくれる人が欲しい”と迫っているようです。正しくは、トップ女優の地位を小娘どもに奪われないためにも、”守ってくれる友人たち(パトロン)が必要なのよ”と、反論している場面です。

アラトリステは「結婚したら、お前に近づく男を殺す。誰であろうと」と答えますが、実際は、もっと長いセリフです。
アラトリステは”結婚したら、お前のもとに来る最初の男(パトロン)を殺す。誰であろうと。俺は絞首台で吊るされ、お前は再び未亡人だ”と、結婚できない理由を淡々と話しているのです。日本語の字幕は短いとはいえ、”結婚は死を意味する”と、はっきり書くべき場面です。

マリアは腹を立てて、「古臭いのね! どうせ私を愛していないんでしょ」と、アラトリステにスカーフを投げつけます。アラトリステは「俺のことを分かっていない」と、マリアにキスしますが、劇場版のセリフの流れでは、”私を守る気がないのね”と怒ったマリアに対して、”愛していると”なだめているように見えます。実際は、男の誇りに命をかける「武人」として、愛していても「寝取られ男」にはなれないのに、そこが分かっていないと言っているのです。

この場面のラストでマリアは、悲しげな表情をしています。物語が進んだ後の場面で、マリアが国王の愛人になってしまうのは、愛するアラトリステとの結婚を諦めたからこそです。いくら国王でも、女性が承諾しなければ屋敷を訪ねたりはしません。もし、アラトリステとの結婚の可能性があったならば、マリアは、国王に乗り換えた尻がる女になってしまいます。(国王の愛人は生涯、他の男と付き合うことが出来なかったそうです)
後の方の場面で、アラトリステがマリアに対して、「お前と結婚すべきだった」と言うのも、この場面で結婚を断ったからこそです。マリアは国王のせいで悲惨な運命を辿るからです。国王にマリアを横取りされたことを愚痴ったセリフではありません。

by Gran-desastre | 2011-05-20 07:11
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